「デニウソン!レギュラー奪取か!?」、「アレシャンドレ・パト、レアルのオファーを蹴ってミラン入り!」「ルーカス、鳴り物入りでリバプールと高額契約!!」今年になって、こんなニュースが世界中を飛び交っている。ご存知のように、この3人いずれも仙台カップの卒業生である。
最近ふと思うことがある。現在のブラジル代表にユースなんてカテゴリーは必要なのだろうか?と。一般的に監督が交代すると、チームの性格はがらりと変わると言われる。俗に「オシムマジック」と呼ばれている日本代表もそのひとつだろう。特に彼の場合は、世代の垣根を越えた大胆な若手起用で、マンネリの選考に食傷気味だったマスコミ界に大きな刺激を与えている。
世界に目を向ければ、アーセナルのセスク・ファブレガス(20才、スペイン代表)、セオ・ウォルコット(18才、イングランド代表)、史上最年少の14才でプロデビューしたフレディ・アドゥ(18才、アメリカ代表、ベンフィカ)など、20才前後の選手たちがナショナルチームを席巻している。ブラジルもその例に漏れず、昨年のドゥンガ監督就任以来、ルーカス(06年10月7日、クウェート戦、途中出場)、デニウソン(06年11月15日、スイス戦、出場なし)、イルシーニョ(07年3月27日、ガーナ戦、途中出場)といった懐かしい名前が、トップチームの舞台を踏んでいる。
特にこのイルシーニョのこと、何人の方が覚えておられるだろうか? 2003年にパルメイラスの右サイドバックとして来仙し、スピードを生かした攻撃でブラジルの初優勝に貢献した選手である。しかし、ジェルソン(現フラメンゴ)やディエゴ・タルデリ(PSV→現サンパウロ)などの仲間が、次々と欧州に移籍していくのを尻目に、長年負傷により不遇をかこっていた。それが昨年サンパウロに移った途端に突然の大ブレイク。ブラジル全国選手権では、右サイドのMVP候補にまでノミネートされた。そうした活躍がスタッフの目に留まり、フル代表の切符をつかんだのだが、彼の快進撃は留まるところを知らず、先日ウクライナのシャフタル・ドネツクへの入団が発表になっている。 また6月のU-20ワールドカップでレギュラーGKだった、カッシオ(グレミオ→現PSV)という若者がいるのだが、長年にわたるブラジル代表の歴史のなかで、彼ほど異色の経歴の持ち主はほかに見当たらないだろう。カッシオは今年3月のチリ戦(3月24日)、ガーナ戦(3月27日)に初選出されたが、この時点でグレミオでも第4GKに甘んじトップチームでの出場なし。また、いずれの年代でもユース代表としての経験がなく、まさしくぶっつけ本番による人事だったのだ。聞くところによれば、たまたまドゥンガがU-20南米選手権を視察した試合で、彼が大活躍したのだそうだ。
年齢や実績ではなく、招集時点での実力をあくまでも重視するドゥンガの哲学は首尾一貫しており、今月22日のアルジェリア戦のメンバーにも、ごく当然のようにルーカスの名前が載っていた。このように20代前半の選手の起用が珍しくなくなった状況では、ユースというカテゴリー分けをすること自体無意味に思えるのだ。実際にU-20ワールドカップと同時期にベネズエラで開催されたコパ・アメリカでは、本来カナダにいるはずのFWアンデルソン(FCポルト→マンチェスター・ユナイテッド)が活躍していたのだから…。いわゆるタレント発掘の場としてのユースというカテゴリーから、すでに臨戦態勢を整えたブラジル代表Bチームとして認識したほうがよいのかもしれない。長年親しんできた「ブラジルユ―ス事情」というこのコーナーのタイトルも、そろそろ幕引きの時期に来たようである。
|