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仙台カップは2度おいしい!  頼野亜唯子

見逃した第1回大会がつくづく惜しい

  3回目の仙台カップが動き出しました。私は昨年から大会の広報物の制作などに関わるようになったのですが、今年も大会準備のお手伝いをさせていただきながら、一人のサッカー好きとして、9月15日からの開催を楽しみに待ちたいと思います。
 仙台カップがどんな意味を持つ大会なのか、見どころはどこか、という話はスポーツジャーナリストの鈴木英寿さんがたっぷりと解説してくれているので、そちらを読んでいただくとして、私が強く主張したいのは「仙台カップを見ないとどんなにもったいないか」ということです。

 白状しますが、実は私、昨年まで仙台カップを知りませんでした! 仙台在住&かなりのサッカー好きにも関わらず、名前くらいは聞いたことあるかな…程度だったのです。実行委員会のお手伝いをすることになって大会内容を聞いた時には「すごい大会じゃないですか!」と驚きました。18歳以下とはいえ、ブラジルやイタリア(昨年・一昨年はイタリア代表が来日)の代表選手が、仙台で本気のサッカーをしていたなんて。しかもそれを全く知らなかったなんて。もったいない……。  そして2003年の大会プログラムを見るに至っては、もったいないどころか「損した」とさえ思いました。日本代表の選手写真がずらりと並ぶページを食い入るように見つめ、「平山相太が来たんだ…え?FC東京の梶山? 苔口って、セレッソの苔口?」とやや興奮気味。有名人に弱いんですねえ。  東北代表メンバーにも、すでにベガルタ仙台入りしていた萬代宏樹選手、大河内英樹選手が名を連ねていました。高校時代の二人のプレーを見る機会をみすみす逃していたとは……惜しい、惜しすぎる。
 ちなみに、現在モンテディオ山形に所属している田中康平選手も、2003年大会の日本代表メンバーの一人。その時のサインの寄せ書きが仙台スタジアムにあるので、モンテディオサポーターの方は機会があったら見てくださいね。

東北代表が日本代表に勝っちゃった――2004年大会のサプライズ

 さて、そんなプロローグを経て迎えた2004年大会。世界の強豪国の「明日のスター」を間近で見られるのが仙台カップの魅力ですが、昨年の6試合の中で、ある意味で最もスタンドを湧かせたのは、日本代表vs東北代表のカードではないでしょうか。だってまさか、東北代表が日本代表に勝つなんて思わないじゃないですか!
   昨年の大会を見ていない人のために、仙台カップでの活躍を足がかりにプロ入りの切符を手にした大久保剛志選手(ベガルタ仙台ユース→ベガルタ仙台)のコメントを織り交ぜながら、あの伝説の(?)ゲームを振り返ってみたいと思います。

 大会3日目の第1試合。日本代表にとっては、ブラジル代表と1−1で引き分け、イタリア代表には3−2と敗れて迎えた3戦目です。スタメンには高校選手権の強豪校やJ1のクラブユース所属の選手がずらり。当時は資料を見ながら「へえー、もうJリーグに出ている選手もいるんだ」なんて漠然と感心していただけですが、あらためて調べてみたら昨年の来仙メンバー18人のうち、当時高3だった選手は全員がJ1入りしていました。ルーキーイヤーの今シーズンからすでに活躍している本田圭佑選手(星陵高→名古屋グランパス)や興梠慎三選手(鵬翔高→鹿島アントラーズ)も、昨年の9月には仙台スタジアムのピッチに立っていたんです。若い才能の見本市みたいな状態ですから、Jリーグのほぼ全チームの監督あるいは強化担当者が顔を揃えていたのも、当然のことなんでしょうね。
 一方の東北代表は、イタリアに2−0、ブラジルには6−0と大敗して勝ち点ゼロ。とはいえ、日本代表を相手に勝つ気満々でこの試合に臨んだようです。大久保剛志選手が

「あの大会の目標が“1勝”だったんですよ。でもイタリア戦に負けてブラジルにも負けちゃって。よし最後だ、最後は絶対勝とうって言って、アップの時、ロッカールームの時から、みんなが集中していました」。

 と振り返るとおり、最初からアグレッシブに攻撃を仕掛ける東北代表。引いて守ってカウンター狙い、なんてことは全く考えていないんだと、開始1分でわかりました。
 そして、先制点はその大久保選手。前半5分、左からのコーナーキックを甚野弘輝選手(福島東高→東海大)がうまくヘッドで落とし、右サイドで拾った橋本和選手(青森山田高→大阪体育大)がシュート。キーパーがはじいたこぼれ球を大久保選手が落ち着いて蹴りこみゴール! 予想外の出来事に湧くスタンド。全員がベンチ前で輪になって踊る東北ボーイズ、嬉しさ大爆発でした。
 以下、得点者だけ並べてみました。

  ◎5分   東北代表 大久保剛志
  ◎14分  日本代表 大江勇詞(洛北高→ヴィッセル神戸)
  ◎18分  日本代表 ハーフナー・マイク(横浜Fマリノスユース)
  ◎43分  東北代表 遠藤直人(FCみやぎユース→順天堂大学)
  ◎50分  東北代表 小寺優輝(青森山田高→阪南大)
  ◎63分  日本代表 興梠慎三
  ◎84分  東北代表 遠藤 康(塩釜FCユース)

 すごい展開でしょう? 日本代表が早い時間に逆転して2−1とした時には「東北のがんばりもここまで?」と思いましたが、なんの、選手たちは全くひるむことなく集中して戦っていました。何と言っても、前半のうちに追いついたのが大きかったですね。つい先日お話をうかがった清水監督いわく、この試合に関しては選手に「いい経験」をさせることより「勝ち」にこだわったとのこと。「メンバー交代も手堅く、真面目に勝ちに行ったでしょう?」と、まるで昨日のことのように嬉しそうでしたが、確かに、前半34分で遠藤選手を投入したことで攻撃にリズムが出て、同点に追いついて折り返すことができましたからね。采配的にも「してやったり」だったのではないでしょうか。

“ホーム”の応援を力にした東北代表

 後半勝ち越したものの追いつかれ、決勝点はなんと当時高校1年生の遠藤康選手。ということは、今年も(来年も)出場資格があるということです。東北代表の中心選手として活躍してくれるのか、それとも日本代表として…? 165cmだった彼の身長は果たして伸びているのかいないのか。そんなことまで含めて非常に楽しみです。
 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、喜びを爆発させる東北代表の選手たちと、笑顔がはちきれそうなスタッフ。対照的に「こんなはずでは…」といわんばかりの沈鬱な表情を浮かべる日本代表選手。無理もありません。全国から選ばれたエリート集団が、選ばれなかった選手のチームに敗れたのですから。しかも、東北代表は仙台カップのためだけに編成されたチームです。選抜メンバーが決まってから大会までは2週間ほど。集まって練習する機会は数えるほどしかありませんでした。長期的な強化計画に沿って合宿や大会を経験してきた日本代表と比べたら、守備においても攻撃においても連携の熟成不足は明らか。そんな相手に4−3と、いわば力負けした形ですから、日本代表選手の悔しさは相当のものだったでしょう。
 それに引き替え、東北代表チームはハッピー全開!大久保剛志選手の話では、大会中にチームとして一つにまとまっていったようです。

  「初めて会う選手もいたので、やってるうちに自然と(お互いのことが)なんとなくわかってきたっていう感じですかね。それでいちばんいい感じになったのが日本代表戦で。あの試合はホント面白かった。みんなが一つにまとまっていて。ありえないくらいによかったですね、あの試合は。最高でした」。

 そうそう、日本代表vs東北代表の試合では、スタンドの観客も大きな仕事をしました。太鼓持参で「東北!東北!」とコールする集団が応援をリード。「判官びいき」心理も働いたのでしょうが、試合展開と相まって、いつのまにか「ホーム・東北代表vsアウェー・日本代表」というムードになっていました。単に「観る」だけではなくて、観客が参加して盛り上げ、その盛り上がりをみんなで楽しむ大会に。仙台カップがサッカーの大会として一歩前進した試合でもあったように思います。

自分だけのヒーローを見つけに行こう

 日本代表の名誉のために付け加えておくと、ブラジル戦、イタリア戦の彼らはスコアどおりのいい戦いをしていました。
 とりわけ私のハートをわしづかみ(!)にしたのは柳澤隼選手(柏レイソルユース)。ブラジルとイタリア相手に1点ずつゴールを決めましたが、それ以外にも観客の目を釘付けにするプレーを次々と披露してくれました。スピードのあるドリブルを武器に常に前を向いてチャレンジしていく姿は、一度見たら忘れられません。意志の強さを感じさせる切れ長の目がまた、映画『誰も知らない』でブレイクした柳楽優弥君と重なったりして…。
 柳澤選手は柏のトップチームに登録されましたが、87年生まれなので今年もまだU-18。日本代表として再び仙台スタジアムに帰ってきて、グレードアップしたプレーを見せてくれるはず……楽しみです!

   仙台カップの面白いところは、ハイレベルであるにも関わらず、ほとんどが初めて見る選手だということ。予備知識なしにまっさらな状態でキックオフから見ていると、「あの選手うまい!」とか「あの選手はすごく走ってる」とか、素人目にさえ訴えかけてくる選手が出てきます。その選手の名前と顔を覚えておくと、冬の高校選手権で活躍したり、Jリーグ入りが発表されたり。すると「ああ、やっぱり。彼はどこか違うと思った」などと、まるで自分が青田買いに成功したような気分になってちょっと嬉しいんですよね。ゲームを楽しんで、その後の選手の動向を知ってまた喜んで。まさに“一粒で二度おいしい”ってやつです。未体験の方は今年こそ、ぜひスタジアムに足を運んで、このおいしさを味わってくださいね!

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