カルロス・アルベルトは1970年メキシコ・ワールドカップ時のブラジル代表キャプテン。決勝のイタリア戦での豪快なゴールは今でも語り草になっている。70年大会はペレが最後に出場したワールドカップであり、ブラジル代表が3度目の世界制覇を成し遂げたメモリアルでもある。
世界を制覇した経験を持つ伝説のキャプテン、カルロス・アルベルトに仙台カップの見どころを直撃した!!
――まずはあなた自身の話から伺います。ティーンエージャーの頃はどのようにして過ごしていましたか。
「私はずぅぅぅっとサッカーに打ち込んでいたよ。常に練習、練習でね。常にスキルを磨いていた。場所さえあればボールを蹴っていたな。それで15歳のときにフルミネンセのトライアルを受けて、幸運なことに合格した。ブラジル流とでもいおうか――どのキッズもプロになりたければクラブのトライアルを受けなければならない。ユースチームには3年間在籍して、18歳のときにトップに引き上げられた。まさに仙台カップに出る選手たちの年頃にね」
――プロを目ざす今の若い子どもたちに何かアドバイスするとすれば? 例えばの話、あなた自身はどのようなことを心がけていましたか?
「何より大切なことは『願う力』だと思う。まず自分が何をしたいのか、何になりたいのか、どう道を切り開いていくのか。実力や才能があるだけでは十分ではない。真剣に全面的にサッカーに取り組まなければいけない」――今回は日本代表、東北代表がブラジルと対戦するわけですが、日本サッカー界の発展をどう見ていますか。
「日本はかなり進歩したと思うね。Jリーグでは多くの外国人選手がレベルアップに貢献した。それにより水準が引き上げられたのだろう」
――ジーコやレオナルド(ともに元鹿島)といった選手のおかげですよね。それにデュンガ(元磐田)やあなたの子息、トーレス(元名古屋)の存在が大きかった。
「確かに、過去はね。ジョルジーニョ(鹿島)もいたくらいだからね。ただ現在日本でプレーしているブラジル人選手を見渡すと、正直言って知らない選手のほうが多いんだ。あまり名のない選手を獲る傾向を改めて、ホンモノにこだわったほうがいい。クラブのクオリティは選手によって決まるのだから」
――とはいえブラジル人選手の特長はかなり日本に貢献しているのでは?
「個人的な意見だが、ブラジル人の特性は二つあると思う。一つがクリエイティビティ(創造性)、そしてもう一つが進化し続ける力。さらに付け加えれば、偉大な選手にはみな、シンプルにプレーする、という力が備わっていた。ワールドカップで3度も優勝したあのペレがなぜ偉大だったのか。その隠れた秘訣は『難しいことをシンプルにプレーする能力』があったからだと思う。このあたりにも注目してみると面白いんじゃないかな」
――さて1970年メキシコ・ワールドカップであなたは優勝トロフィーを掲げました。
「あれは私のプロ人生の中でも本当に素晴らしい瞬間だった。一個人の人生にとってもそうだったが、ブラジルサッカーのモニュメントでもあったね」
――U―18代表の選手たちが、将来ワールドカップを掲げるようになるためには、どのようなことが必要だと思いますか。
「まず毎日練習すること。そして基本スキルを磨くことだ。キック、トラップ、ドリブル、そしてヘディングといった当たり前のように思える技術をね。トップレベルではこれらの基礎技術が勝負を左右すると言っても過言ではない。そして一度一定の水準に達したら、絶対に不平不満をもらしてはならないし、次のことを理解しなければならない。常に上手くなる可能性があるし、上手くならなければならないとね。偉大な選手になるためには、毎日進化しなければならない。進化をとめてはならないんだ」
――あなた自身もそうやって取り組んできたということですか?
「もちろん。フルミネンセのユースでスキルを磨き、4年後にユース代表に選ばれたのも大きかった。モチベーションは上がったし、サッカー選手であることの責任感も増したからね」
――10代の頃に挫折や失敗を経験したことは?
「若い頃は敗北を受け入れるのはとても難しいものだ。自分が敗れた現実を受け入れるのはね。でもやがて慣れていくものだと思う。失敗は成長の証でもある。失敗も含めてのスポーツだ。勝者がいれば、そこには常に敗者がいる!」
――仙台カップのような国際ユース大会は選手の育成にとってどれくらい重要なのでしょうか?
「私自身、1963年にU−18代表としてプレーし、中南米の王者に輝いた経験がある。あれはサンパウロで開催された大会だったけど、当時はユース代表が集う大会はそれほど多くなかった。今では数多くのユース系国際大会が開かれている。とりわけブラジル代表は数多くの大会に出場している。長時間の移動にも適応できるだろうし、異なる国のスタイル、戦術に触れることもできる。疑いなく、各国の育成に貢献していると言えるだろう。異なるスタイル、フットボール文化に直接触れることで、サッカーのレベルアップだけでなく、国際文化の交流にもつながるはずだ」
――ブラジルのユース育成事情についてはいかがでしょう。
「ブラジルにおけるユース育成システムは非常に充実している。インフラ面も整備されているし、選手はみな真剣に練習に取り組んでいるよ。数多くの元有名選手がユース世代の育成に取り組んでいるが、これはブラジルがいかに育成を重要視しているかの証拠。厳しいセレクションを通過した選手たちは一流のコーチ陣から指導を受けて、プロになるための入念な準備を施されている。選手の質、量もさることながら、指導者の層の厚さもブラジルの強みだ」
――そういった中からカカやロビーニョ(レアル・マドリー)のような逸材が育ってきているのですね。
「そう。彼らの下の世代からも新しい発見は生まれている。仙台カップに出場する選手の中にも素晴らしい逸材が隠れているかも知れない。でもヨーロッパの事情は異なるよね。たとえ素晴らしい選手でも、たとえば20歳くらいの優れた選手がいたとして、彼がすぐにチャンスを与えられるか? ブラジルのようにはいかないよね。なぜならすぐに即戦力の外国人選手にポジションを奪われるからだ。それもブラジル人などにね(笑)」
――ではこのあたりで仙台カップを観戦する日本のファンにメッセージを。
「ブラジルの若手を思う存分に楽しんで欲しいね。もちろん日本代表や東北代表の活躍も大いに楽しんでもらいたい。素晴らしいトーナメントになるよう、心から祈るよ」
――参加する選手へのメッセージもどうぞ。「何よりも、若手はハードに訓練されなければならない。ただサッカーは肉体的接触が頻繁にあるスポーツだけど、乱闘やバイオレンスだけは絶対に許されない。それはピッチ外でも同じこと。フェアプレーの精神を守り、ベストのプレーを披露したチームが輝くよう、遠くブラジルから見守っているよ!」
取材・構成/アレックス・ベロシュ、ダン・ブレナン
翻訳/鈴木英寿
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