原石発見の貴重な機会
日本、東北、ブラジル、クロアチアのU−18代表が集う仙台カップは、文字通り「原石」発掘の場だ。
将来、日の丸を背負って立つ逸材は誰か。ブラジル、クロアチアの未来を担う逸材たちはどんなプレーを披露してくれるのか――。スタジアムに足を運べば、そこには原石たちがしのぎを削る試合が待っている。
アンダー世代の代表の意義は時代とともに変化しているが、世界共通の目的は「有望な才能を発掘し、育て、A代表に送り込む」ことに尽きる。現在活躍するトップスターにも、10代のうちにアンダー世代の代表を経験。その後、世界の舞台へと大きく羽ばたいていった「かつての原石たち」がたくさんいる。
たとえば日本代表MF中田英寿。現在ベガルタ仙台でプレーする財前宣之らとともに、93年のU−17世界選手権(日本開催)に出場した日本の司令塔は、日本がまだワールドカップに出場していなかった頃から「世界」を意識し、切磋琢磨してきた逸材だった。 28年ぶりとなる五輪出場を成し遂げた1996年アトランタ世代の躍動、「ジョホールバルの奇跡」を経てワールドカップ初出場を遂げた98年フランス大会の歓喜、そして韓国との共同開催で迎えた02年日韓大会でのベスト16入り。これらを支えたのは、中田英寿、小野伸二といった10代から「世界」との距離を体感してきた選手たちである。
中田英寿を10代の頃から取材し、各国サッカー事情にも精通する『週刊サッカーダイジェスト』編集長の山内雄司は、仙台カップの意義を次のように語る。
「10代のうちから世界のトップクラスにぶつかり、己の手ごたえと課題を肌で知る。仙台カップの意義はまさにそこにあると思います。確かに中田英寿は突然変異のように現われた先駆者であり、ある意味においては異端児でした。では彼のような存在がもう現われないのか? 私はそうは思いません。ブラジル、クロアチアという世界の強豪とぶつかり、そこで得た経験をクラブなり、高校なりに持ち帰って切磋琢磨していけば、第2、第3の中田英寿が仙台カップから生まれるかも知れません。もちろん、A代表までの道のりは極めて険しいわけですが」
また昨年までベガルタ仙台に所属していた佐藤寿人(サンフレッチェ広島)は、仙台カップを観戦してきたJリーガーのひとり。自身はアンダー世代の日本代表を経験してきた経歴を持つ。
「僕らの頃は日本のユース代表レベルでの国際大会は静岡のSBSか、新潟国際くらいしかなかった。でも、いまは仙台でもこうした大会がある。僕らの頃にもあると良かったと思うくらい、素晴らしいチャンスだと思います。この仙台カップを通じて選手たちは確実に成長するでしょう。3回目を迎え、この大会は定着してきたと思うし、仙台カップがもっともっと定着して、素晴らしい歴史を刻んでいって欲しい。心からそう願っています」
佐藤寿人は仙台カップに対し、このような熱いエールを送った。現役Jリーガーも、“仙台カップ産”のスター発見に期待を膨らませている。
U−18日本代表は「超本気」
さて、今回参加する4チームのなかで、最も「本気モード」で戦うと見られるのが、U−18日本代表だ。
というのも、U−18日本代表は次のワールドユース(2007年)に向けた1次予選を11月に控えており、仙台カップは予選前に戦う最後の大会形式。1次予選では北朝鮮、台湾と同居(最終予選出場は3チーム中1チーム)するが、会場は北朝鮮の首都・平壌になることが有力視されている。極めて厳しい戦いが予想されるなか、吉田靖監督率いるU−18日本代表は1次予選前の“最終調整”として仙台に乗り込む。
U−18日本代表の基本システムは中盤をフラットに配する4−4−2。キープレーヤーは194aのストライカー、ハーフナー・マイク(横浜F・マリノスユース)。そして右サイドの仕掛け人、山本真希(清水エスパルスユース)。この二人が攻撃陣を牽引する。
またボランチの青山隼(名古屋グランパスエイトユース)も期待の逸材である。青山は仙台市出身。FCみやぎバルセロナを経て名古屋ユース入りした経歴を持つ。守備的役割を担う青山が、仙台スタジアムでどのようなプレーを披露するのか。青山にとって、仙台カップは“凱旋ツアー”になる。
このように見るべきタレントは複数存在するのだが、このU―18代表は、「さきのワールドユース・オランダ大会で活躍した選手たちと比較すると、やや小粒」というのが、各メディア・評論家筋の一般的な評価である。そうは言っても、2005年ワールドユース代表と仙台カップに出場するU―18代表は、2008年北京五輪を担う世代。それだけに、U―18日本代表の活躍には大いに注目すべきであろう。ましてや選手の顔ぶれが異なるとはいえ、U―18日本代表は、昨年大会でU―18東北代表に敗れた経緯がある。
つまり単なる本番モードではなく、仙台カップでのU―18日本代表は、強豪・北朝鮮とのワールドユース1次予選を前に「超本気モード」で戦ってくる。いや、戦わなければならない立場に置かれているのだ。
吉田監督は以前から、東京ヴェルディ1969の怪物FW森本貴幸を招集し、チームとの融合を図りたいと語ってきた。ヴェルディ側との交渉次第では、仙台カップで「森本&ハーフナー」の強力2トップが見られるかも知れない。U−18日本代表の参加選手発表は絶対に見逃せない。
各チームのカラーを楽しむ!
最後にU―18日本代表以外の残る3チームについても触れておこう。
ブラジルは改めて説明するまでもなく、世界に君臨するサッカー王国。ワールドカップ優勝5回は大会最多(これに次ぐのはイタリア、ドイツの3回)。今夏ドイツで行なわれたコンフェデレーションズカップ(各大陸の王者を決定する国際サッカー連盟主催の公式大会)でも、決勝で宿敵アルゼンチンを下し、見事大陸王者の称号を手にした。このときキャプテンを務めていたのが、バルセロナに所属する現代最高のクラッキ(名手)、ロナウジーニョである。
ロナウジーニョは97年のU−17世界選手権で優勝、99年のワールドユースでも優勝するなど、アンダー世代のブラジル代表でも抜群の実績を誇る。仙台カップに出場するU―18ブラジル代表にもロナウジーニョの再来に期待したいところだ。
ただ、残念ながら現在のブラジルのアンダー世代の代表は日本と違い、国内には「アンダー世代の最強チーム」を組めない事情がある。というのもここ数年、CBF(ブラジル・サッカー連盟)とブラジル国内のクラブ間で選手の招集問題を巡る綱引きが恒常的に続いているのだ。つまり、A代表とはともかく、五輪代表を含むアンダー世代の選手招集にクラブ側が積極的に協力しないため、CBFはユース系の国際大会でベスト布陣を組めないというジレンマを抱えている。
とはいえ、第1回仙台カップでは、ジエゴ・タルデリが出場している。彼は現在、所属するサンパウロで活躍。今年のリベルタドーレス杯(南米クラブ王者決定戦)でゴールを決めるなど、有望株として成長中だ。今回の仙台カップに出場するブラジル代表は、決して「18歳世代のベストメンバー」ではないかも知れない。だが、ブラジル国内で注目されている逸材は必ず出場すると見ていいだろう。将来、ヨーロッパのメガクラブからスカウトされるようなビッグホープに出会えるチャンスが、仙台カップにはあると言える。
第1回・2回大会出場のイタリアにかわってヨーロッパから登場するクロアチアは、面積が九州の約1・5倍、人口は440万人程度の小国。このように国の規模は小さいものの、“東欧のラテン”旧ユーゴスラビアの国らしく、伝統的にテクニシャンを輩出してきたサッカー強国である。現在もヨーロッパの各主要リーグに優れた選手を次々と送り込む「人材供給国」だ。
国際舞台でのハイライトは98年フランス・ワールドカップ。このときはボバン、シュケルなどを擁して初出場3位の快挙を成し遂げた。その後は世代交代に苦しんだが、着実に若手が成長。ドイツ・ワールドカップのヨーロッパ予選ではグループ8の首位を走る。
U―18クロアチア代表はA代表同様に、テクニックに優れた選手を集め、個人技と組織の融合をはかるだろう。クロアチアの選手はテクニックだけではなく、フィジカルも強い。恵まれた体躯を持つ彼らを相手に、他の3チームがどう戦うか。このあたりも見どころだ。
最後にU―18東北代表である。
チームを率いるのは前年に引き続き、元ベガルタ仙台監督の清水秀彦。J最多勝監督が東北の地からどのような選手を発掘し、育て、大会に挑むのか。興味は尽きない。
清水監督の監督としてのモットーのひとつが、「個性」である。個性あふれる選手による、魅力的なサッカー。たとえばスペインリーグでは、下位チームでも攻撃的で魅力あふれるサッカーを提供しようとしている。ベテラン監督率いる東北代表も、攻撃的でワクワクするようなサッカーを展開してくると予想する。
現在フリーの解説者として多忙の日々を過ごす清水監督は、チャンピオンズ・リーグやスペインリーグを現地観戦し、世界最先端のサッカーを探求する一方で、仙台市内でサッカースクールを運営。子どもたちの育成にも携わっている。
視野を広げ、幅広い経験にさらに磨きをかけた清水監督が、どのようなチームを編成するかだけでも興味があるが、そこからどう子どもたちを成長させるか。東北代表の子どもたちが強敵相手にどれだけ実力を発揮し、牙を見せるかに、東北代表の最大の見どころがある。
ちなみに東北代表対日本代表では、「東北代表の清水監督対日本代表の森保コーチ」という師弟対決も実現する。こうした点も仙台カップの楽しみとして付け加えておきたい。
他にも、この紙面には書きつくせないほどの数多くの見どころが、仙台カップには控えている。3回目を迎えた秋のビッグトーナメント。9月の開幕が、実に待ち遠しい。 |